「インユーリアールム・レメディウム・エスト・オブリーウィオー」と読みます。
injūriārum は「不正、被害」を意味する第1変化名詞 injūria,-ae f. の複数・属格です。remediumにかかります。
この属格は「目的語的属格」と呼ばれます。
たとえば、amor deīという表現において、deī(deusの単数・属格)はamorにかかります。
日本語に訳すと「神の(deī)愛(amor)」ですが、「神<が>(人間を)愛すること」と訳す場合は「主語的属格」、「神<を>(人間が)愛すること」と訳す場合は「目的語的属格」です(どちらも可能)。
remedium は「治療」を意味する第2変化名詞 remedium,-ī n. の単数・主格です。
再び injūriārum remediumについて言えば、直訳は「不正の(injūriārum)治療(remedium)」です。この表現は、「不正<が>治療すること」ではなく「不正<を>治療すること」と解釈できますので、このinjūriārumは「目的語的属格」とみなせます。
estは不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数です。
oblīviō は「忘却」を意味する第3変化名詞 oblīviō,-ōnis f. の単数・主格です。
remediumもoblīviōもどちらも主語の資格があります。片方を主語とみなすと、片方を補語とみなします。
一般的な訳は、「不正の治療は忘却である。」となります。
これを「忘却とは不正の治療である」と訳すこともできます。
プブリリウス・シュルスの金言です。
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コメント
コメント一覧 (3件)
プブリリウスの格言「一度にふたつのことをすることはどちらもしないということだ」をラテン語で知りたいと思いネットを検索しましたが、どうにも要領を得ませんでした(中には「英語の格言」として挙げられているサイトまでありました!)。ぜひ原語での表現を知りたいと思っておりますが、ご教示願うことはできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
山下です。
プブリリウス・シュルスの言葉とのこと、私は知りませんでした。
Latin Libraryのシュルスのページを開きます。
https://www.thelatinlibrary.com/syrus.html
「二つ」を意味するduoで検索してみます。
Ad duo festinans neutrum bene peregeris.
これでしょうか。
2つのもの(duo)に向かって(Ad)急ぐ時(festinans)君はどちらも(neutrum)うまく(bene)成し遂げられ(peregeris)ないだろう。
語彙は以下の通りです。
festino,-are 急ぐ
neuter,-tra,-trum どちらも~でない
perago,-ere 成し遂げる
参考になれば幸いです。
語彙の解説までをもご丁寧にありがとうございます!
ラテン語はたった6語なのにどうしてこう味わい深いのでしょうか。しびれます。
たまたま読んでいた、マルチタスクに関する英語のエッセイの最終段落で、「プブリリウス・シュルスも言ってるようにね」的な一文があったのですが、その具体的な格言(調べたところ”To do two things at once is to do neither.”)は紹介されないままエッセイは終わっていました。ですので、西洋人はみんなプブリリウスのことを知っているのか!!?と仰天してしまったのでした。
大変興味深いサイトもご紹介いただきありがとうございます。活用していけるように勉強を続けたいと思います。