エッセイ

Ubi sunt? 彼らは何処

Ubi sunt? ウビ・スント 彼らは何処

亡くなった人に思いを馳せる慣用句です。「彼らは今どこにいるのか。もうこの世にはいない」と意訳できます。彼らとは誰か?それはこの言葉をつぶやく一人一人が自分の心の中で決めることになります。天に召された肉親のことでもいい。歴史を飾った有名な人たちでもいい。死は誰にでも平等に訪れ、自分もいずれはこの世を去ります。

人間は死んでどこに行くのでしょうか。ローマの詩人ウェルギリウスは、死者の住む地下の冥界を描いています。生前悪いことをした人は地獄のような場所で罰を受けます。よい行いをした人は「エリュシウムの園」(シャンゼリゼ)に住みます。地獄も極楽も地下にあるという発想が面白いです。

それに対し、キケローは、ローマの偉人たちが死後宇宙の高みに住んでいることを示唆しています。あるローマの英雄が孫の夢枕に現れ、宇宙のとある場所から小さな地球を指さしつつ、真の誉れが何であるかを語ります。あの小さい星のシミに見えるのがローマだ、宇宙の時間に比べ地上の人生など一瞬に過ぎない、ちっぽけな名誉など気にかけるな、と喝を入れます。

死後の世界について誰も確かなことはわかりません。ただ言えることは、亡くなった「彼ら」は今も呼べば心の中に蘇るということ。とすれば、我々も行いと言葉を通じて死後も誰かの記憶の中に生きると言えるのかもしれません。

-エッセイ
-

© 2020 山下太郎 Powered by AFFINGER5