Mater artium necessitas.

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語彙と文法

「マーテル・アルティウム・ネケッシタース」と読みます。
māterは「母」を意味する第3変化名詞māter,-tris f.の単数・主格で、文の補語です。
artium は「技、技術」を意味する第3変化名詞 ars,artis f.の複数・属格で、Māterにかかります。
necessitās は「必要」を意味する第3変化名詞necessitās,-ātis f.の単数・主格です。文の主語です。
「必要は技術の母」と訳せます。

Q. なぜnecessitāsが主語とわかるのですか?Māterが主語ではいけませんか?

A. Māterを主語にしてもよいです。その場合「技術の母は必要である」となり、日本語として意味が多少わかりづらくなります。

Q. なぜartiumはMāterにかけるべきと判断できますか?necessitāsではいけませんか?

A. いけない理由はありません。じっさいnecessitāsにかけてみましょう。「技術の(artium)必要は(necessitās)母(Māter)である」となります。ただし日本語として意味がとれませんね?上の訳(必要は技術の母)はいろいろな訳し方の可能性をふるいにかけた上で残った訳ということになります。

このサイトもそうですが、そうした試行錯誤のあれこれはいちいち記録として残さず、結論だけを書いて示しています。だからそれしか訳し方はないかのようですが、ラテン語の場合、ほとんどの場合、本当はいくつかの訳の可能性が常にありえます。それらを比較検討し、どれが日本語として納得ゆくかを自分なりに決めるという手続きをとります。

ラテン語読解は「ラテン語半分、日本語半分」です。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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