Tacitum vivit sub pectore vulnus.

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「タキトゥム・ウィーウィト・スブ・ペクトレ・ウルヌス」と読みます。
「静かな、沈黙している」を意味する tacitum は vulnus にかかる第1・第2変化形容詞 tacitus,-a,-um の単数・中性・主格です。
vīvit は「生きる」を意味する第3変化動詞 vīvō,-ere の直説法・能動態・現在、3人称単数です。主語は vulnus です。
sub は「~の下で」を意味する前置詞で、奪格をとります。
pectore は「胸」を意味する第3変化名詞 pectus,-toris n. の単数・奪格です。
vulnus は「傷」を意味する第3変化名詞 vulnus,-neris n. の単数・主格で、文の主語です。
「静かな傷は胸の下で生きる。」という意味になりますが、tacitum を副詞的に訳し、「傷は静かに胸の下で生きる。」と訳してもよいです。
出典はウェルギリウスの『アエネーイス』4巻67行です。恋に苦しむカルターゴーの女王ディードーの懊悩(傷と表現されています)を表現した箇所です。
田中・落合訳では「傷は黙りて(隠れて)胸裡に生く。」(『引用語辞典』岩波書店)、泉井訳では「胸中ふかく音もなく、かくれて傷は生きている。」(『アエネーイス』岩波文庫)、岡・高橋訳では「もの言わぬ傷が胸の中に息づいている。」(『アエネーイス』京大学術出版会)、小林訳では「胸の奥、傷は静かに息をしている。」(『ローマが残した永遠の言葉』NHK出版)となっています。

アエネーイス (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 岡 道男

ウェルギリウス

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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