「インプロベ・アモル・クゥィド・ノーン・モルターリア・ペクトラ・コーギス」と読みます。
Improbe は「邪な」を意味する第1・第2変化形容詞improbus,-a,-umの男性・単数・呼格です。Amorにかかります。
Amorは「恋の神」を意味する第3変化名詞Amor,-ōris m.の単数・呼格です。
quidは疑問代名詞quis,quid(誰が、何が)の中性・単数・対格です。
nōnは「~でない」。cōgisを否定します。
mortāliaは第3変化形容詞mortālis,-e(人間の)の中性・複数・対格です。pectoraにかかります。
pectoraはpectus,-oris n.(心)の複数・対格です。
cōgisはcōgō,-ere(<人>に<もの>を強いる)の直説法・能動態・現在、2人称単数です。<人>も<もの>も対格になります。
「邪な(Improbe)恋の神よ(Amor)、そなたは人間の(mortālia)心に(pectora)何を(quid)無理強いしないことがあるか(nōn…cōgis)」。
「恋の神は人間の心に働きかけ、どんな無理難題もこなすように強いる、というのです。
岡・高橋訳では、「邪なアモルよ、おまえが死すべき人の心に無理強いせぬことがあるのか」となっています。
ウェルギリウスの『アエネーイス』にみられる表現です(Aen.4.412)。
quidを「なぜ」の意味でとると、「なぜ(quid)そなたは人間の心に無理強いしないことがあるか」となります。
文法的にはどちらの訳も正解ですが、『アエネーイス』の文脈に照らすとquidを疑問代名詞ととるのが正解となります。
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