Vivamus, mea Lesbia, atque amemus ともに生き、ともに愛し合おう:カトゥッルス

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語彙と文法

「ウィーウァームス・メア・レスビア・アトクウェ・アメームス」と読みます。
vīvāmusはvīvō,-ere(生きる)の接続法・能動態・現在、1人称複数です。「意志」の用法です。
meaは1人称単数の所有形容詞meus,-a,-um(私の)の女性・単数・呼格です。Lesbiaにかかります。
LesbiaはLesbia,-ae f.(レスビア)の単数・呼格です。レスビアは女性の名前です。
atqueは「そして」。vīvāmusとamēmusをつなぎます。
amēmusはamō,-āre(愛する)の接続法・能動態・現在、1人称複数です。これも「意志」の用法です。
「生きよう、私のレスビア、そして愛し合おう」と訳せます。
ローマの恋愛詩人カトゥッルスの表現です。

ラテン語に次のような景気のよい表現があります(作者不明)。Ede, bibe, lude, post mortem nulla voluptas. 「食べろ、飲め、遊べ、死後に快楽はなし」と訳せます。表題の言葉はこのモチーフをカトゥルス流にアレンジしたもののように感じられます。

カトゥルスの『カルミナ』(『詩集』)第5歌のテクストと訳

カトゥルスの『カルミナ』(『詩集』)第5歌のテクストと訳をご紹介します。

1-6
Vivamus mea Lesbia, atque amemus,
rumoresque senum severiorum
omnes unius aestimemus assis!
soles occidere et redire possunt:
nobis cum semel occidit brevis lux,
nox est perpetua una dormienda.

ともに生きようよ、愛しのレスビア、そして愛し合おう。
頭の固い年寄りの陰口は
みんな1アスの値打ちもないと考えようよ。
太陽は沈んでもまた昇ることができる。
私たちは、いったん短い光が沈んだら、
永遠に続くひとつの夜を眠らないといけない。

7-9
da mi basia mille, deinde centum,
dein mille altera, dein secunda centum,
deinde usque altera mille, deinde centum.

私に千の口づけをおくれ、それから百。
つづいてまた千。そして百。
それからまた千。つづけて百。

10-13
dein, cum milia multa fecerimus,
conturbabimus illa, ne sciamus,
aut ne quis malus invidere possit,
cum tantum sciat esse basiorum.

こうやって何千もの口づけをかわしたら、
数をごちゃごちゃにしてしまおう。何が何だかわからないように、
また口づけの数がこんなにも多いことを知って、
だれか性質(たち)の悪い男がねたまぬように。

カトゥルスの『カルミナ』(『詩集』)第5歌の語彙と文法

一字一句の語彙と文法を説明します。

1-6
Vīvāmus mea Lesbia, atque amēmus,
rūmōrēsque senum sevēriōrum
omnēs ūnīus aestimēmus assis!
sōlēs occidere et redīre possunt:
nōbīs cum semel occidit brevis lux,
nox est perpetuā ūna dormienda.

Vīvāmus: vīvō,-ere(生きる)の接続法・能動態・現在、1人称複数。
mea: 1人称単数の所有形容詞meus,-a,-umの女性・単数・呼格。Lesbiaにかかる。
Lesbia: Lesbia,-ae f.(レスビア)の単数・呼格。
atque: 「そして」。Vīvāmusとamēmusをつなぐ。
amēmus: amō,-āre(愛する)の接続法・能動態・現在、1人称複数。
rūmōrēsque: rūmōrēsはrūmor,-ōris m.(噂、評判、世評)の複数・対格。-queは「そして」。amēmusとaestimēmusをつなぐ。
senum: senex,senis c.(老人)の複数・属格。rūmōrēsにかかる。
sevēriōrum: 第1・第2変化形容詞sevērus,-a,-um(厳格な)の比較級、男性・複数・属格。senumにかかる。
omnēs: 第3変化形容詞omnis,-e(すべての)の男性・複数・対格。rūmōrēsにかかる。
ūnīus: 代名詞的形容詞ūnus,-a,-um(一人の、一つの)の男性・単数・属格。assisにかかる。
aestimēmus: aestimō,-āre(評価する)の接続法・能動態・現在、1人称複数。
assis: ās,assis m.(アス、通貨単位)の単数・属格。「価値の属格」。
sōlēs: sōl,sōlis m.(太陽)の複数・主格。
occidere: occidō,-ere(落ちる、沈む)の不定法・能動態・現在。
et: 「そして」。occidereとredīreをつなぐ。
redīre: redeō,-īre(戻る、再び現れる)の不定法・能動態・現在。
possunt: 不規則動詞possum,posse(<不定法>ができる)の直説法・能動態・現在、3人称複数。
nōbīs: 1人称複数の人称代名詞、与格。
cum: 「~とき」。直説法の動詞(occidit)を伴い、「時間文」を導く。
semel: 「ひとたび」。cum semelで「ひとたび~すると」。
occidit: occidō,-ere(落ちる、沈む)の直説法・能動態・現在、3人称単数。
brevis: 第3変化形容詞brevis,-e(短い)の女性・単数・主格。luxにかかる。
lux: lux,lūcis f.(光)の単数・主格。
nox: nox,noctis f.(夜)の単数・主格。
est: 不規則動詞sum,esse(ある)の直説法・現在、3人称単数。
perpetua: 第1・第2変化形容詞perpetuus,-a,-um(永遠の)の女性・単数・主格。noxにかかる。
ūna: 代名詞的形容詞ūnus,-a,-um(一人の、一つの)の女性・単数・主格。noxにかかる。
dormienda: dormiō,-īre(眠る、眠って過ごす)の動形容詞、女性・単数・主格。noxにかかる。dormiōの他動詞的な用法は詩的用法。

<逐語訳>
(一緒に)生きよう(Vīvāmus)私の(mea)レスビア(Lesbia)、そして(atque)愛し合おう(amēmus)。そして(-que)とても厳格な(sevēriōrum)老人たちの(senum)すべての(omnēs)噂話は(rūmōrēs)一(ūnīus)アスの値打ち(assis)と判断しよう(aestimēmus)。

太陽は(sōlēs)沈むこと(occidere)と(et)再び戻ることが(redīre)できる(possunt)が、ひとたび(semel)短い(brevis)光が(lux)沈む(occidit)とき(cum)、永遠の(perpetua)一つの(ūna)私たちにとって(nōbīs)眠って過ごされるべき(dormienda)(=私たちが眠って過ごさなければならない)夜が(nox)ある(est)。

7-9
da mi basia mille, deinde centum,
dein mille altera, dein secunda centum,
deinde usque altera mille, deinde centum.

10-13
dein, cum milia multa fecerimus,
conturbabimus illa, ne sciamus,
aut ne quis malus invidere possit,
cum tantum sciat esse basiorum.

7-13は書きかけです。

カトゥルスについて

カトゥッルスは、政治家キケロや伝記作家ネポースと同時代人でした。百あまりの詩をおさめた『詩集』を、次のような言葉とともにキケローに献じています。

今の、過去の、
そして未来のロムルスの
子孫たち(ローマ人)
の中で最も雄弁な方
マルクス・キケロ様へ。
最悪のへぼ詩人カトゥッルスが、
あなたに最大の感謝を捧げます。

あなたが最高のパトロンであるのと
同じだけ最悪の詩人カトゥッルスより。
(第49歌)

キケローはローマの伝統から隔絶したカリマコス(アレクサンドリア時代の詩人)の影響を受けた詩作の傾向に対しては批判的で、「新詩人」という言葉を用いて揶揄(やゆ)しました。

この詩の韻律について

Vīvā | mus mea | Lesbi (a,) |  atqu(e) a | mēmus, 1
rūmō | rēsque se | num se | vēri | ōrum 2
omnēs | ūnius | aesti | mēmus | assis! 3
sōlēs | occide | r(e) et re | dīre | possunt: 4
nōbīs | cum semel | occidit | brevis | lux, 5
nox est | perpetu |(ā) ūna | dormi | enda. 6

ヘンデカシュッラブス・パラエキウス(hendecasyllabus phalaecius)と呼ばれる韻律です(→「十一音節詩」wikipedia)。原則は「脚の単位でなく、一行単位で韻律が決っている」(『独習者のための楽しく学ぶラテン語』小林標)とはいえ、リンク先のウィキペディアの解説にある「– – / – u u / – u / – u / – u(スポンデーウス/ダクテュルス/トロカエウス/トロカエウス/トロカエウス)となります」に従って区切っていくと、法則性が見つけやすいです。

スポンテーウス(spendēus):長長格(- -)
ダクテュルス(dactylus):長短短格(- u u)
トロカエウス(trochaeus):長短格(- u)

3行目の | ūnius | はダクテュルスとするため、i が短くなっています。

この詩の朗読

朗読を聞いてみましょう。

カトゥルス5番の朗読

『ギリシャ・ローマ名言集』では10番目のラテン語として、soles occidereからuna dormienda.までが紹介されています。
カトゥッルス

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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