Multarum artium scientia nos ornat.

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「ムルタールム・アルティウム・スキエンティア・ノース・オルナト」と読みます。
multarumは「多くの」を意味する第1・第2変化形容詞 multus,-a,-um の女性・複数・属格でartium にかかります。
artiumは「学芸、学問」を意味する第3変化名詞 ars,artis f.の複数・属格で scientiaにかかります。「目的語的属格」にあたります。
scientiaは「知識、知ること」を意味する第1変化名詞 scientia,-ae f.の単数・主格です。
multarum artium scientiaで「多くの学芸知識」と訳せますが、「多くの学芸知ること」とも訳せます。「の」が「を」に変わる点に注意してください。この訳し方ができる点で artiumは「目的語的属格」とみなせます。
nosは1人称複数の人称代名詞 nosの対格です。ornatの目的語です。
ornatは「飾る」を意味する第1変化動詞 orno,-areの直説法・能動態・現在、3人称単数です。主語は scientiaです。
「多くの学芸の知識は我々を飾る」と訳せます。
この表現はタキトゥスの『弁論家についての対話』(32.1)にみられます。前後を含む文を紹介します。

ipsa multarum artium scientia etiam aliud agentes nos ornat, atque ubi minime credas eminet et excellit.
多くの(multarum)学芸の(artium)知識(scientia)そのものが(ipsa)他のことを(aliud)行っている(agentes)我々(nos)さえ(etiam)飾る(ornat)、そして(atque)あなたが少しも(minime)信じて(credas)いないとき(ubi)、それは(=scientia)際立ち(eminet)そして(et)突出する(exellit)。

agentesはago(行う)の現在分詞、男性・複数・対格でnosと性・数・格が一致します。この分詞の訳し方を工夫すると、「他のことを(aliud)行っている場合(agentes)でさえ(etiam)我々を(nos)飾る(ornat)」とすることもできます。

柳沼先生の『ギリシア・ローマ名言集』の50番目の引用表現として紹介されています。先生の訳は、「もろもろの学芸のことを知っているというまさにそのことが、直接それを扱っていない場合でも、われわれの身を飾り、思いもよらぬときに、現れてくるものだ」となっています。

ギリシア・ローマ名言集 (岩波文庫)
柳沼 重剛

この本はハンディで旅のお供にぴったりです。kindle版もあるので、私はいつもそちらを参照しています。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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