「タントゥム・レリギオー・ポトゥイト・スアーデーレ・マロールム」と読みます。
tantumは「これだけ多くのもの(量)」を意味する第2変化名詞 tantum,-i n.の単数・対格です。suadereの目的語です。
religioは「宗教、迷信」を意味する第3変化名詞 religio,-onis f.の単数・主格です。
potuitは「<不定法>が可能である」を意味するpossum,posseの直説法・完了、3人称単数です。
suadereは「助言する、勧める」を意味する第2変化動詞 suadeoの不定法・現在です。
malorumは「悪行」を意味する第2変化名詞 malum,-i n.の複数・属格です。tantumにかかります。
「宗教は(religio)悪事の(malorum)これだけ多くの量を(tantum)勧めること(suadere)が可能であった(potuit)」と訳せます。
「宗教にはこれだけ多くの悪行をそそのかす力があった」という意味です。
ルクレーティウスの言葉です(Lucr.1.101)。
ここでいわれる「宗教」は「迷信」に近い意味で用いられています。また「悪事」の例として「アウリスのイピゲネイア」のエピソードが紹介されています。
物の本質について (岩波文庫 青 605-1)
ルクレーティウス 樋口 勝彦