Ars adeo latet arte sua.

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「アルス・アデオー・ラテト・アルテ・スアー」と読みます。
arsは「技術、技巧」を意味する第3変化名詞 ars,artis f.の単数・主格です。
adeō は「それほどまで」を意味する副詞です。
latetは「隠れる」を意味する第2変化動詞 lateō,-ēre の直説法・能動態・現在、3人称単数です。主語はarsです。
arteはars(技巧)の単数・奪格です(「手段の奪格」)。
suāは3人称の所有形容詞 suus,-a,-um の女性・単数・奪格です。arteにかかります。arte suā で「自分の技巧によって」と訳します。
「技巧がそれほどまで自分の技巧によって隠れている」と訳せます。卓越した技巧のため、人間の技術が施されたと感じさせない出来栄えになっているという趣旨です。
オウィディウスの『変身物語』に出てくる表現です。この言葉が使われている背景はこちら
ピュグマリオンという彫刻家が自分の作った乙女の像に惚れてしまうという筋書きで用いられる言葉だとわかります。
中村先生の訳では「技巧が技巧を隠していた」となっています。これは意訳ということになります。文の勢いを重視し受動を能動に変えている点、latetは現在ですが文脈から過去として訳している点に注意します(「歴史的現在」ともとれる)。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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