「アルス・アデオー・ラテト・アルテ・スアー」と読みます。
arsは「技術、技巧」を意味する第3変化名詞 ars,artis f.の単数・主格です。
adeō は「それほどまで」を意味する副詞です。
latetは「隠れる」を意味する第2変化動詞 lateō,-ēre の直説法・能動態・現在、3人称単数です。主語はarsです。
arteはars(技巧)の単数・奪格です(「手段の奪格」)。
suāは3人称の所有形容詞 suus,-a,-um の女性・単数・奪格です。arteにかかります。arte suā で「自分の技巧によって」と訳します。
「技巧がそれほどまで自分の技巧によって隠れている」と訳せます。卓越した技巧のため、人間の技術が施されたと感じさせない出来栄えになっているという趣旨です。
オウィディウスの『変身物語』に出てくる表現です。この言葉が使われている背景はこちら。
ピュグマリオンという彫刻家が自分の作った乙女の像に惚れてしまうという筋書きで用いられる言葉だとわかります。
中村先生の訳では「技巧が技巧を隠していた」となっています。これは意訳ということになります。文の勢いを重視し受動を能動に変えている点、latetは現在ですが文脈から過去として訳している点に注意します(「歴史的現在」ともとれる)。
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