Nil admirari.

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語彙と文法

「ニール・アドミーラーリー」と読みます。
nīlは「無」を意味する不変化名詞、単数・対格で、admīrārī の目的語です。nīl はnihil の別形です。
admīrārī は形式受動態動詞 admīror,-ārī(驚く)の不定法・現在です。
直訳は「無を驚くこと」となりますが、「何にも驚かないないこと」という意味になります。
「不動心」を表すホラーティウスの言葉として知られます(Hor.Ep.1.6.1)。

続きの文脈

nīl admīrārī prope est rēs ūna, Numicī,

sōlaque quae possit facere et servāre beātum.

prope以下の説明は次の通りです。
prope: ほとんど、ほぼ
est: 不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数。主語はnīl admīrārīです。
rēs: rēs,reī f.(もの、こと)の単数・主格。
ūna: 代名詞的形容詞ūnus,-a,-um(一人の、一つの)の女性・単数・主格。rēsにかかります。
Numicī: Numicus,-ī m.(ヌミキウス)の単数・呼格。
sōlaque: sōlaは代名詞的形容詞sōlus,-a,-um(唯一の)の女性・単数・主格。-queは「そして」。ūnaとsōlaをつなぎます。
quae: 関係代名詞quī,quae,quodの女性・単数・主格。先行詞はrēsです。接続法を伴い、「傾向の関係文」を導きます。
possit: 不規則動詞possum,posse(<不定法が>できる)の接続法・能動態・現在、3人称単数。
facere: faciō,-cere(つくる)の不定法・能動態・現在。
et: 「そして」。facereとservāreをつなぎます。
servāre: servō,-āre(保つ)の不定法・能動態・現在。
beātum: beātum,-ī n.(幸福)の単数・対格。

<逐語訳>
「何事にも驚かないこと(nīl admīrārī)、それは幸福を(beātum)つくり(facere)そして(et)保つことが(servāre)できる(possit)ような(quae)ほとんど(prope)一つの(ūna)そして(-que)唯一の(sōla)こもの(rēs)である(est)」。

<柳沼訳>
「何事にも驚かないということが、人を幸福にし、幸福に保つことができるただ一つの道だ」。

文献案内

ラテン文学を読む――ウェルギリウスとホラーティウス (岩波セミナーブックス S14)
逸身 喜一郎

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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