Melior est certa pax quam sperata victoria.

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「メリオル・エスト・ケルタ・パークス・クゥァム・スペーラータ・ウィクトリア」と読みます。
melior は第1・第2変化形容詞bonus,-a,-um(よい) の比較級melior,-iusの女性・単数・主格です。
certa は「確かな」を意味する第1・第2変化形容詞 certus,-a,-um の女性・単数・主格です。pāx にかかります。
pāx は「平和」を意味する第3変化名詞pāx,pācis f. の単数・主格です。
quam は比較における「~よりも」を意味する副詞です。
spērāta は「望む、希望する」を意味する第1変化動詞 spērō,-āre の完了分詞 spērātus,-a,-um の女性・単数・主格です。victōria にかかります。
victōria は「勝利」を意味する第1変化名詞victōria,-ae f.の単数・主格です。
「望まれる勝利より確実な平和の方がよい。」と訳せます。
ローマの歴史家リーウィウスの言葉です(Liv.30.30)。

この文には続きがあります。

 haec in tuā, illa in deōrum manū est.   

haecは指示代名詞hic,haec,hoc(これ)の女性・単数・主格です。
inは「<奪格>に」を意味する前置詞です。
tuāは2人称単数の所有形容詞、女性・単数・奪格です。manūにかかります。
illaは指示代名詞ille,illa,illud(あれ)の女性・単数・主格です。
deōrumはdeus,-ī m.(神)の複数・属格です。manūにかかります。
manūは第4変化名詞manus,-ūs f.(手)の単数・奪格です。
estは不規則動詞sum,esse(ある、いる)の直説法・現在、3人称単数です。
「これは(haec)あなたの(tuā)手(manū)に(in)、あちらは(illa)神々の(deōrum)手(manū)に(in)ある(est)」。

ここで問題があります。haec(これ)、illa(あれ)はそれぞれ何を指すのでしょうか。

単語の配列の上で、近い方をhaec、遠い方をillaと考える場合もあります。
その場合、「これ=勝利」、「あれ=平和」となり、文の意味がおかしくなります。
書き手の心理的観点で考えた場合、今手にしている確実な平和こそ現実であり心理的に近く、不確実な勝利は想像の世界の中にあり心理的に遠いと考えられます。
そのとき、haecがpax(平和)、illaがvictōria(勝利)をさすという解釈が成り立ちます。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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