語彙と文法
「モルス・ネク・ボヌム・ネク・マルム・エスト」と読みます。
morsは「死」を意味する第3変化名詞mors,mortis f.の単数・主格です。
bonumは「善い」を意味する第1・第2変化形容詞ですが、この文ではmorsと性が一致しません。ここでは「善」を意味する中性名詞(単数・主格)として用いられています。
malumも本来は「悪い」を意味する第1・第2変化形容詞ですが、この文では「悪」を意味する中性名詞、単数・主格として用いられています。
nec A nec B の構文で、「AでもBでもない」となります。
estは不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数です。
「死は善でも悪でもない」と訳せます。
セネカの『マルキアへの慰め』に見られる表現です(Sen.Marc.19.5)。
文献案内
セネカの残した言葉をたいへんわかりやすく紹介したものとして、中野孝次氏の『ローマの鉄人 セネカの言葉』をご紹介します。
ローマの哲人 セネカの言葉
中野 孝次