Nec mora, nec requies. 休止も休息もない

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ウェルギリウス

語彙と文法

「ネク・モラ・ネク・レクィエース」と読みます。
necは「そして~でない」を意味します。nec A nec B で、A,Bともに否定します。
mora は「遅延、休止」を意味する第1変化名詞mora,-ae f.の単数・主格です。
requiēs は「休息」を意味する第3変化名詞requiēs,-ētis f.の単数・主格です。
動詞は省略されていますが、est を補うことができます。
休止も休息もない」と訳せます。
ウェルギリウスの『農耕詩』に見られる表現です(3.110)。
戦車競技の様子を描く場面に出てくる言葉です。

現代生活に当てはめると、多忙な人を表す言葉としてふさわしそう
ですが、オリジナルの文脈を心にとめると、一心不乱に何かに打ち込む様子を表した言葉として受け止めることができます。

この表現はルクレティウスに用例があります。

usque adeo omnibus ab rebus res quaeque fluenter
fertur et in cunctas dimittitur undique partis
nec mora nec requies interdatur ulla fluendi,
perpetuo quoniam sentimus et omnia semper
cernere odorari licet et sentire sonare.(Lucr.D.R.N.6.931-935)

このように、あらゆる物体からそれぞれの物質が
流れるように出ていき、それらは四方八方に放出され、
その流出には、いかなる遅延も休止もない。
なぜなら、われわれはいつもそれを感知し、絶えずすべてを
見分け、嗅ぎ分け、音を感じ取ることができるからである。935

文献案内

牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)
ウェルギリウス
京都大学学術出版会
ウェルギリウス

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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