教科書の読者から代名詞に関する質問をいただきました。
Q. しっかり学ぶ初級ラテン語第6章の例文17から19までですが、17については、指示代名詞及び指す言葉双方が男性単数対格ということがわかります。他方で18及び19については、関係代名詞と指す言葉の性数格が一致しているように思えず、疑問に思うところです。
具体的には、指示代名詞は女性単数対格と思われますが、指す言葉(Cynthia)は女性単数主格と思われ、一致しないように思われます。ここでは何故指示代名詞がeamとなるのでしょうか。
お返事します。
p.120の例文17 はLibrum habeō. Eum tibi dabō.(私は1冊の本を持つ。君にそれをあげよう。)
例文18はCynthia formōsa est. Eam amō.(キュンティアは美しい。私は彼女を愛している。)
例文19はLūna lūcet. Eam videō.(月が輝いている。私はそれを見ている。)
一言でお答えすると、「文中での役割が異なるため」ということになります。基本的には英語の指示代名詞と同じ考え方でよいです(例外は後述)。
17の例文は、たまたま、指示代名詞も、それが指す直前の文の名詞も、文中での働きが「目的語」という点で一致している例です。
18でEamとなる理由を考えます。文の「目的語」で「主語」でないためEaでなくEamになります。かりに指示代名詞を使わない場合、amōの目的語として、EamはCynthiamになります。逆に、Cynthia formōsa est.の文について、もしCynthiaを指示代名詞で書き換える場合、Ea formōsa est.となります。英語でも、Cynthia is beautiful.に続いて、「彼女を私は愛する」という文がくる場合、Cynthiaはsheとならずherになります。つまり、I love her.です。元のCynthia is beautiful.を指示代名詞で書き換えると、She is beautiful.です。
19についてみてみます。Lūna lūcet. のLūnaは女性・単数・主格ですが、それは文の「主語」になるためです。続く、Eam videō.は「私はそれを見る」という意味になりますので、Eamは文の「目的語」であることがわかります。これを主格にすることはできません。よって、Lūnam videō.とすべきところ、指示代名詞を使って書き換える場合、Ea videō.は誤りで、Eam videō.とします。
以上をご理解いただいた上で、少し発展的なことを書きます。例文19ですが、もしこれを英語で訳す場合、Eam videō.のEamはher でなくitになります。itだからといって、ラテン語でid を使うと中性・単数・対格となり、lūna(女性)を指すことができなくなります。
ラテン語の指示代名詞は、指示する名詞の性と数に一致し、格は文中の役割に応じて変化する、というとらえ方でよいです。
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