キケローのルクレーティウス評

  • URLをコピーしました!

紀元前54年2月の弟クィントゥスに宛てた書簡に次のようなルクレーティウス評が見られます。

Lucreti poemata, ut scribis, ita sunt: multis luminibus ingenii, multae tamen artis.
ルクレーティウスの詩は、おまえの言うとおり、天才の輝きに満ち、技巧の限りを尽くしている。

キケローは随所でエピクロス派に対する批判的な言葉を残していますが、上の文を読むと決して批判一辺倒ではないことが伺えます。tamen(しかし)はingeniiとartisの対比をふまえています。強いて訳すと、「それでいて」となります。

artisについて、上の訳は「詩の技巧」ととっていますが(一般的な解釈)、一方で、エピクロス哲学の「理論」とみなす意見もあります。

その場合、後半の訳は、「天才の輝きに満ちているが、大部分が哲学の理論で構成されている(つまり退屈である、等)。

Cicero

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

コメント

コメントする

目次