紀元前54年2月の弟クィントゥスに宛てた書簡に次のようなルクレーティウス評が見られます。
Lucreti poemata, ut scribis, ita sunt: multis luminibus ingenii, multae tamen artis.
ルクレーティウスの詩は、おまえの言うとおり、天才の輝きに満ち、技巧の限りを尽くしている。
キケローは随所でエピクロス派に対する批判的な言葉を残していますが、上の文を読むと決して批判一辺倒ではないことが伺えます。tamen(しかし)はingeniiとartisの対比をふまえています。強いて訳すと、「それでいて」となります。
artisについて、上の訳は「詩の技巧」ととっていますが(一般的な解釈)、一方で、エピクロス哲学の「理論」とみなす意見もあります。
その場合、後半の訳は、「天才の輝きに満ちているが、大部分が哲学の理論で構成されている(つまり退屈である、等)。
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