Bella, horrida bella.

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「ベッラ・ホッリダ・ベッラ」と読みます。
Bellaはbellum,-ī n.(戦争)の複数・対格です。
horridaは第1・第2変化形容詞horridus,-a,-um(ぞっとさせる、恐ろしい)の中性・複数・対格です。次のbellaにかかります(「政・数・格が一致」)。
bellaはBellaと同じく、bellum,-ī n.(戦争)の複数・対格です。
「戦争を、恐ろしい戦争を」と訳せます。
中性名詞は主格と対格が同じ形です。
「戦争、恐ろしい戦争」と訳すことも可能です。その場合、「戦争とは恐ろしいものだ」という趣旨で、この一行が引用されることになります。
ただし、原文を見ると、次のようになります。ウェルギリウスの『アエネーイス』第6巻の表現です(6.86-87)。

… Bella, horrida bella,
et Thybrim multō spūmantem sanguine cernō.
戦争だ、恐るべき戦争だ。
テュブリス川がおびただしい血で泡立つのが見える。

上の日本語訳は意訳であり、文法に即して逐語訳すると次のようになります。

「戦争を(Bella)、恐ろしい(horrida)戦争を(bella)、そして(et)多くの(multō)血によって(sanguine)泡立つ(spūmantem)テュブリス川を(Thybrim)私は見る(cernō)」。

つまり、Bellaはcernōの目的語になっているため、対格ととるのが正しいです。文脈を補足しておきますと、ここで言われる戦争とは、やがて始まるラティウムにおけるトロイア人とラティーニー人の壮絶な戦争を意味しています。その戦争の到来を巫女シビュッラがアポッローのお告げという形で主人公に伝える際の表現です。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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