エッセイ

2020-09-21 ウェルギリウスの命日に寄せて

2020年9月21日

今日9月21日はウェルギリウス(B.C.70~B.C.19)の命日とされる日です。

この日に合わせてaeneis.jpのドメインを取得し、サイトを一新しました。

ラテン語を学ぶ目的として、「ウェルギリウスを原文で読む」というのもありでしょう。

私は数多くの「自称初心者」の方にラテン語を教え、一緒にラテン語を読んできましたが、その経験から言えることは、「誰でもウェルギリウスは読める」ということです(「自称初心者」と書くのは、英文法を学んだ人にとって、ラテン語はゼロからのスタートではないからです)。

「読める」ということの定義はあいまいかもしれませんが、書かれている内容が日本語として理解できることに加え、日本語訳ではとうてい味わえないラテン語ならではの表現の巧みさを味わうこと、などを指して私は「読める」と言っています。

それなりの努力が必要なのは言うまでもありません。

もちろんラテン文法の理解なしに前に進めません。

しかし、ラテン語は世の中が思うほど難解なものではなく、むしろ我々日本人には親しみやすく、独学しやすい言語です(このことについて、私はエッセイ等で繰り返し述べてきました)。

前者の一助として、教科書(「しっかり学ぶ初級ラテン語」)があります。独習の支えとして、ラテン語メーリングリストの勉強会があります(無料)。毎月ラテン語文法の講習会も開いています。どちらも、練習問題の一字一句に至るまで丁寧に確認しながら進めています。もちろん、教科書を一人で最後まで学びとおす人を支援するべく、メールでの質問には随時お答えしてきました。

この結果、教科書を最後まで「通読」できたとしましょう。得られるものは、「ラテン文法の見取り図」です。けっして細部に至るまで変化表や活用表を完全暗記している必要はありません(それを目標にするので挫折します)。

この「見取り図」は旅行における「地図」のようなものです。

旅をする際、目的地の地図を完全暗記する必要はありません。わからなければ、地図を見るか、人に尋ねればよいからです。

同じことが、ウェルギリウスやキケローの読解に関しても言えるのです。

教科書を横に置き、原文の一字一句を説明した資料を手に入れることで、原文読解は身近に楽しめるようになります。

それを可能にするのが、ひととおり教科書を最後まで終えて「見取り図」を手に入れることあり、これがなければ教科書を調べることもできないし、解説の資料も活用できません。

逆の言い方をすると、教科書を通読し「見取り図」を手にできたら、教科書の使い方(調べ方)もわかり、原文の一字一句を解説した資料の意味も理解できるのです。

このサイトには1000以上のラテン語の名言・名句が紹介されています。ラテン語と日本語訳だけではありません。一字一句の語彙と文法の意味を説明しています。

文法を学んだ人はこの説明があれば一人でラテン語の解釈ができるでしょう。学んでいない人にとっては、「目がちかちかする」、「頭がくらくらする」印象をもたれるでしょう。

その違いは、文法をひととおり「学んだ」かどうかであり、けっして文法を「極めた」かどうかではありません。

もちろん、文法理解の精度は低いより高い方がよく、変化表を「調べる」だけより「覚える」ほうが文の理解も早くなるのでベターです。

ウェルギリウスを原文で読むには、1)教科書を最後まで読んで文法用語に慣れること、2)詳しい説明のついた資料を手に入れること、この二つがあればだいじょうぶです。

ラテン語講習会では、ウェルギリウスの『アエネーイス』を読んでいます。資料の一例は、kindle版「ウェルギリウス『アエネーイス』第Ⅰ巻序歌を読む」でご覧いただけます。

このような資料があれば、いわば登山道のある山を登るようなもので、あとは根気さえあればなんとかなる、という心境になるでしょう。

この手の資料は欧米にもあります。Parsed Vergil: Completely Scanned-Parsed Vergil's Aeneid Book Iというのがあります。

これを使わない場合でも、読むことはもちろん可能です。

私は大学の授業でウェルギリウスを読みましたが、文法を学んだ後、翻訳を参考に使いながら辞書をまめに引きながら読んだものです。

しかし、時間が膨大に必要でした。学生時代はそれが可能でしたが、忙しい人にとって、ラテン語より時間の捻出の方が難しい課題です。

私の今の仕事は登山道を整備するようなものだと思っています。

一人でも多くの人が山道を自分の足で歩み、地上では見ることのできない素晴らしい眺めを堪能してもらえたら、それにまさる喜びはありません。

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