「ボース・クゥォクゥェ・フォルモーサ・エスト」と読みます。
bōsはbōs,bovis c.(牛)の単数・主格です。この名詞はc.(common gender)が示すように男性名詞としても女性名詞としても用いられます。この文では形容詞formōsaの形(女性・単数・主格)から女性名詞として用いられていることが明らかです。
quoqueは「~もまた」を意味します。
formōsaは第1・第2変化形容詞formōsus,-a,-um(美しい)の女性・単数・主格です。文の補語です。
estは不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数です。
この文は二通りに訳せます。一つは、Bōsを文の主語とみなし、「雌牛もまた美しい」。牛以外に美しいものがいるような文脈であればこれも一つでしょう。
もう一つは、Bōsを主格補語とみなす訳し方です。主語は動詞estから「彼女は」を補い、Bōsがこの主語の説明を行うと考えます。この場合、「彼女は牛として」と訳せます。原文の前後関係を見ると、この訳し方が正解だとわかります。残りの部分も訳すと、「彼女は牛としてもまた美しい」です。ちょっと何のことかわかりませんね。
この「彼女」とは、ユッピテル(ユピテル)に愛された王女イーオーのことです。ギリシア神話において、彼女は雌牛に姿を変えられたのですが、「牛になってもなお美しかった」のです。
オウィディウスの『変身物語』に出てくる表現です(Met.1.612)。
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