ナンバーはどうしてNO.か?(読者の質問に答えます)

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ナンバーはどうしてNO.か?

読者の質問とお返事

Q1. どうしてナンバーを略した形は Nu. でなく No. なのですか?

A. ちょっと大きな英和辞書に載っていると思いますが、No. とはラテン語で数を意味する Numerō(ヌメロー)の省略形です。

厳密に言えば、ラテン語で「数」を意味する第2変化名詞 numerus(ヌメルス)の単数・主格の形(辞書に載っている見だし)ですが、その奪格(だっかく)と呼ばれる変化形が numerō です。この格に注意して直訳すれば、「数において」という意味になります。

たとえば40という数字は、ラテン語でnumeō quadraginta(ヌメロー・クゥァドラギンタ)と言いますが、これは「数において40」という意味です。英語だと、forty in number とさらっと訳せるのですが、日本語だと少しまわりくどい感じですね。

Q2. numero の省略形が No. ということは分かりました。ときに、最初と最後の文字をくっつけるという省略の仕方は、英語では一般的でないように思いますが、ラテン語などではよくあることでしょうか?

A.そうですね。ラテン語は激しく語尾変化します。ですから、単語の変化の形もわかるように語尾を残して省略を行うのだろうと思います。

乗り物のバスを例に取りますと、この英語 bus も omnibus(オムニブス)というラテン語の形容詞の省略語です。

omnis(オムニス)という形容詞は「すべての」という意味ですが、これがomnibusと語尾変化しますと、「複数・与格(よかく)」と呼ばれる形になります(性は男性・女性)。

与格(よかく)といってわかりにくければ、英語の「間接目的語」に相当する格だとイメージしていただいていいでしょう。

したがって、omnibus を日本語にしますと、「すべての人のために」となります。バスとはみんなの利用する乗り物だというわけです。そしてこのやや長いラテン語の語尾だけを切り取ってできたのが、bus(バス)というつづりです。

numerusの変化(曲用)

上の話の補足です。ラテン語の名詞numerusは次のように変化(曲用)します。第2変化の男性名詞の例です。

単数 複数
主格(呼格) numerus numerī
属格 numerī numerōrum
与格 numerō numerīs
対格 numerum numerōs
奪格 numerō numerīs

単数・奪格numerō の省略語を作る際、語のはじめとおわりの二文字を使うことで、格変化の区別に配慮していることになります。

なぜNo.となるのか?せんじつめていえばラテン語の名詞は語尾が命だということ、それに尽きるでしょう。
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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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