罰と苦しみ

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罰と苦しみ

ドストエフスキーの作品に Crime and Punishment(罪と罰)というのがある。punishment の動詞形は punish であり、「罰する」という意味を持つ。では punish とは、元来どういう意味を持つのであろうか。

punish の語源は punire(プーニーレ)というラテン語で、意味は英語同様「罰する」である。 この punire というラテン語は、「罰」を意味するラテン語の名詞 poena(ポエナ)と関連している。 試みに、「ポエナ」と3回発音してみると、なんとなく「ペナ」に近くなる。 ポエナとは、英語のペナルティー(刑罰)の語源である。

また、「痛み」を意味する英語はペイン(pain)であるが、この言葉も、ルーツはラテン語の poena である。

さらに、pine(パイン)という英単語(「思い焦がれる」という意味)も、同じく poena が語源である。 「苦しむ」というニュアンスが共通するのだろう。

なお、ラテン語の poena はギリシア語のポイネーに由来する。 ポイネーとは、元来 blood money(殺人償金)の意として用いられた語である。

殺人償金:「近親を殺された人が殺人者またはその家族から代償として受け取る慰謝料」(研究社「新英和大事典」による。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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