「デウス・アンヌイト・コエプティース」と読みます。
deusは「神」を意味する第2変化名詞 deus,-ī m.の単数・主格です。
annuitは「<与格>に同意する」を意味する第3変化動詞annuō,-ere の直説法・能動態・完了、3人称単数です。形の上では直説法・能動態・現在とみなすことも可能です。完了とみなすとき、過去に同意が得られ、それが今に続いているというニュアンスが出てきます。
coeptīsは「企て」を意味する第2変化名詞coeptum,-ī n.の複数・与格です。
「神は企てに同意した」と訳せます。
ウェルギリウスの『アエネーイス』に見られる次の表現を元にして作られた言葉です。
Iuppiter omnipotens, audacibus annue coeptīs.(9.625)
「全能のユッピテルよ、わが大胆な企てに同意したまえ」
背景は以下の通りです(意訳です)。
Talia iactantem dictis ac dira canentem
non tulit Ascanius, nervoque obversus equino
contendit telum diversaque bracchia ducens
constitit, ante Iovem supplex per vota precatus:
このような言葉を投げつけ、恐ろしい声を響かせる
ヌマーヌスに、アスカニウスは我慢ならなかった。馬の毛の弓弦に
矢をつがえ、仁王立ちになって両腕を
ぐいと引き絞ると、まずユッピテルに祈り、願をかけた。
‘Iuppiter omnipotens, audacibus adnve coeptis. 625
ipse tibi ad tua templa feram sollemnia dona,
et statuam ante aras aurata fronte iuvencum
candentem pariterque caput cum matre ferentem,
iam cornu petat et pedibus qui spargat harenam.’
「全能のユッピテルよ、この大胆な企てをよしとせよ。
わたしはあなたの神殿に恒例の供物を捧げよう。
祭壇の前に、額を金色で覆った白い若牛を
立たせよう。頭を母牛と同じ高さに掲げ、
すでに角で挑もうとし、足で砂を蹴散らす若牛を。