『アエネーイス』第1巻の「ユーノーの神殿の絵」

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『アエネーイス』第1巻の「ユーノーの神殿の絵」

Namque sub ingenti lustrat dum singula templo,453 
彼は壮大な神殿のもとで各部を目で辿りながら
reginam opperiens, dum, quae fortuna sit urbi,
女王を待っていた。都の繁栄ぶりを示すように、
artificumque manus inter se operumque laborem
工匠たちが互いに腕前を競い、精魂込めた作品に
miratur, videt Iliacas ex ordine pugnas,
感嘆していたとき、彼の目に映るは、事の順に描かれたトロイアの戦い、
bellaque iam fama totum volgata per orbem, 
いまや世界中に名高く知れ渡った戦争、
Atridas, Priamumque, et saevum ambobus Achillem.
アトレウスの子らとプリアムスと、彼ら双方に残酷なアキレス。
Constitit, et lacrimans, ‘Quis iam locus’ inquit ‘Achate, 
彼は立ち止まり、涙を流して言った。「アカーテスよ、
quae regio in terris nostri non plena laboris?
いまやどの場所が、地上のどの国が、われわれの苦難で満たされていないだろうか。
En Priamus! Sunt hic etiam sua praemia laudi;
見よ、プリアムスを。ここにも誉れは報酬を受けている。
sunt lacrimae rerum et mentem mortalia tangunt. 
ここにも人の世に注ぐ涙があり、人間の苦しみは人の心を打つ。
Solve metus; feret haec aliquam tibi fama salutem.’
恐れを捨てよ。この名声がおまえにもたらす救いは必ずある」。
Sic ait, atque animum pictura pascit inani,
こう言うと、実のない絵で心を慰めつつ、
multa gemens, largoque umectat flumine voltum.
何度も嘆息し、溢れる涙で顔を濡らす。

日本語は岡・高橋訳(西洋古典叢書)

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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