嫉妬:ホラーティウス

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ホラーティウスの『詩集』1.13のラテン語と訳をご紹介します。

XIII

Cum tu, Lydia, Telephi
cervicem roseam, cerea Telephi
laudas bracchia, vae, meum
fervens difficili bile tumet iecur.
Tunc nec mens mihi nec color
certa sede manet, umor et in genas 5
furtim labitur, arguens
quam lentis penitus macerer ignibus.
Uror, seu tibi candidos
turparunt umeros inmodicae mero 10
rixae, sive puer furens
inpressit memorem dente labris notam.
Non, si me satis audias,
speres perpetuum dulcia barbare
laedentem oscula, quae Venus 15
quinta parte sui nectaris imbuit.
Felices ter et amplius
quos inrupta tenet copula nec malis
divolsus querimoniis
suprema citius solvet amor die. 20

リュディアよ、おまえが「テレプスのばら色のうなじ」だとか、「テレプスの柔らかな腕」とか褒めるとき、ああ、私の胸は抑えがたい怒りにたぎり、膨れあがる。

そんなとき、私の思慮も顔色も、確かな場所にとどまってはいない。はからずも涙がほほを流れ落ち、どれほど心の奥深くで私がくすぶった火にさいなまれているかを示している。

私は嫉妬の炎に焼かれるのだ。生の酒に度をこした諍いがおまえの白い肩に傷をつけたり、あの若者が燃える思いでおまえの唇に消えぬ印を残したときには。

もし私の話をよく聞いてくれるなら、ウェヌス女神が自らの神酒の精髄を染み込ませたおまえのかわいい唇を荒々しく傷つけるような男が、いつまでも心変わりをしないなどと期待してはならない。

三倍に、いやそれ以上に幸福な者たちとは、確かな絆に結ばれ、悪しき争いに引き裂かれない愛によって、いまわの日まで離ればなれにならぬ者たちのこと。

ホラティウス全集
鈴木 一郎
4472119013

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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