「クゥィド・ティビ・ウィータンドゥム・プラエキプエー・エクシスティメース・クゥァエリス・トゥルバム」と読みます。
quidは「何」を意味する疑問代名詞の中性形、単数・対格です。
tibiは2人称単数の人称代名詞tuの与格です。
vitandumは「避ける」を意味する第1変化動詞vitoの動形容詞、中性・単数・対格です。quidと性・数・格が一致します。esseを補うとき、quid tibi vitandum esse で「動形容詞の述語的表現」が認められます。tibiは「行為者の与格」です。quidは意味上の主語としての対格です。
praecipueは「とりわけ」を意味する副詞です。
exsistimesは「判断する、みなす」を意味する第1変化動詞exsistimoの接続法・能動態・現在、2人称単数です。
quidからexistimesの内容は、quaerisの目的語に当たる間接疑問の名詞節を構成するため、その動詞は接続法になっています。
quaerisは「尋ねる」を意味する第3変化動詞quaeroの直説法・能動態・現在、2人称単数です。
turbamは「群衆」を意味する第1変化名詞turbaの単数・対格です。
「何があなたによってとりわけ避けられねばならないとみなすべきか、あなたは尋ねるのか。群衆だ」と訳せます。
このように動形容詞の述語的表現は、字句通りに訳すと意味が不鮮明になります。
受動の部分を能動に直して訳すと、「とりわけ何を避けねばならないとみなすべきか、あなたは尋ねるのか。それは群衆だ」となります。
セネカの『倫理書簡集』に見られる表現です(Ep.7.1)。
セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I
兼利 琢也