Est quaedam flere voluptas.

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「エスト・クゥァエダム・フレーレ・ウォルプタース」と読みます。
est は不規則動詞sum,esseの直説法・現在、3人称単数です。「<主語>が存在する(est)」という意味と「<主語>は<補語>である(est)」という場合と2通りの訳し方が出来ます。表題は後者の例です。
quaedam (或る、何らかの、一種の)は不定形容詞 quīdam,quaedam,quoddam の女性・単数・主格です。voluptās にかかります。
flēreはfleō,-ēre(泣く)の不定法・能動態・現在です。中性・単数名詞として主語になります。
voluptās は「喜び、快楽」を意味する第3変化名詞voluptās,-ātis f.の単数・主格です。文の補語です。
「泣くことはある種の喜びである」という意味になります。
オウィディウスの『悲しみの歌』に見られる表現です(4.3.37)。

この表現には次の一行が続きます。

explētur lacrimīs ēgeriturque dolor.

「エクスプレートゥル・ラクリミース・エーゲリトゥルクゥェ・ドロル」と読みます。
explēturはexpleō,-ēre(満たす、和らげる、癒す、鎮める)の直説法・受動態・現在、3人称単数です。主語はdolorです。
lacrimīsはlacrima,-ae f.(涙)の複数・奪格です。「涙によって」。
ēgeriturはēgerō,-ere(追い出す、追い払う)の直説法・受動態・現在、3人称単数です。主語はdolorです。
-queは「そして」。explēturとēgeriturをつなぎます。
dolorはdolor,-ōris m.(悲しみ)の単数・主格です。
直訳は、「悲しみは涙によって鎮められ、そして追い払われる」となります。

オウィディウス

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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