英語とラテン語

友ともてなし

友ともてなし

友情に関する議論は古来絶えることを知らない 。キケローの『友情について』(De Amicitia)は、最古の友情論の一つであり、その中にいくつかの有名な言葉を見出すことができる 。すなわち、「真の友は第二の自己である」、「真の友はまれである」、「すぐれた人物の間以外には友情はありえない」、「確かな友は不確かな境遇の下(もと)で知られる」など 。最後の言葉は、英語の格言 A friend in need is a friend indeed.(まさかの時の友こそ真の友)を思い出させる。

英語で「友」を意味する friend の語源は、古英語 freond にさかのぼり、「愛する」という意味と関連する 。興味深いことに、ラテン語で「友」を表す amicus (アミークス)もまた、「愛する」という意味を持つ動詞 amo (アモー)からできた言葉である 。英語における friend の地位は絶大で、「友」に関しては、ラテン語の amicus に由来する言葉の出番は多くない。強いてあげるとすると、amiable (愛想のいい)、amicable(友好的な)くらいである。

friend 以外で「友」に関連した英単語には、mate(連れ)、companion(仲間)、comrade(同僚)などがある。mate は「食事をともにする者」という意味を持つ古いドイツ語に由来し、「肉」を意味する meat と関連している。companion も「パン(panis)を共にする者」という意味を持つラテン語からできた言葉である。肉とパンの違いはあるが、mate も companionも「同じ釜の飯を食う仲間」というニュアンスをもつのだろう。なお、companion は「交わり、交際」を意味する英単語 company ともつながりをもっている。「会社」を英語で company というが、基本的には「仲間でつくった組織」という意味合いが込められていると思われる。

comrade (同僚)はスペイン語の camarada からできた言葉だが、「同室の仲間」というニュアンスを持つ。「部屋」のことをスペイン語では camara と言う点がポイントである。ちなみに、このcamaraは、元来「アーチ型の天井」を意味するラテン語の camera からできた語である。写真機の「カメラ」もこのラテン語に由来する。なお、スペイン語に限らず、イタリア語でも camera はそのままの綴りで「部屋」の意味を持つが、同じなりたちで生まれた言葉として、フランス語の chambre、英語の chamber などが挙げられる。

ところで、古代ローマ社会では「外国の友」を自宅で手厚くもてなす習慣があり、その友のことを hospes (ホスペス)と呼んだ 。英語で「もてなし」を意味する hospitality (ホスピタリティ)はこのラテン語が語源である。身近な英単語の例では、hotel (ホテル)やhospital(病院)もこのラテン語(ホスペス)と関連している 。もっとも、日本語の訳だけで考えた場合、ホテルとホスピタリティの関係は容易に想像がつくものの、「病院」と「ホテル」のつながりはぴんとこないのではないだろうか 。

最近では、医療の世界においても、ホスピス(hospis)という言葉がしばしば用いられるようになった。患者に対する精神的な「安らぎ」や「癒し」を提供する場というニュアンスで用いられることが多い。この言葉がラテン語のホスペス(友)に由来することは一目瞭然であるが、すでに触れたように、言葉の歴史を振り返るなら、hospital (病院)そのものが、今述べたhospis とともに、「もてなし」、「安らぎ」、「癒し」を強く示唆する言葉であった。

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