『ギリシャ・ローマ名言集』(ローマの部12番)に「いつわりのとも」と題して次のラテン語と日本語訳が紹介されています。
ut hirundines aestivo tempore praesto sunt, frigore pulsae recedunt, item falsi amici sereno vitae tempore praesto sunt; simul atque hiemem fortunae viderunt, devolant omnes.
「燕たちが、夏の季節にはわれわれの所にいるが、寒さに襲われればいなくなる、それと同様にいつわりの友も、人生の波の平穏なときにはそばにいてくれるが、運勢の冬きたると見れば、みなたちまち飛んでいなくなる」(柳沼訳)。
以下、テキストにマクロンをつけ、直訳を試みてみましょう。
ut hirundinēs aestīvō tempore praestō sunt, frīgōre pulsae recēdunt, item falsī amīcī serēnō vītae tempore praestō sunt; simul atque hiemem fortūnae vīdērunt, dēvolant omnēs.
語彙と文法
ut: 「~ように」。直説法の動詞(sunt)を伴い、「比較文」を導く。
hirundinēs: hirundō,-diniss f.(ツバメ)の複数・主格。
aestīvō: 第1・第2変化形容詞aestīvus,-a,-um(夏の)の中性・単数・奪格。temporeにかかる。
tempore: tempus,-poris n.(時、時期、季節)の単数・奪格。
praestō: 手近に、そばに(副詞)
sunt: 不規則動詞sum,esse(いる、ある)の直説法・現在、3人称複数。
frīgōre: frīgor,-ōris m.(寒さ)の単数・奪格。
pulsae: pellō,-ere(駆り立てる、追い出す)の完了分詞、女性・複数・主格。hirundinēsと「性・数・格が一致」。
recēdunt: recēdō,-ere(退く、消え去る)の直説法・能動態・現在、3人称複数。
item: 「同様に」。先行するut文の内容を受ける。「ut以下のように、それと同様に(item)」。
falsī: 第1・第2変化形容詞falsus,-a,-um(偽りの)の男性・複数・主格。amīcīにかかる。
amīcī: amīcus,-ī m.(友、友人)の複数・主格。
serēnō: 第1・第2変化形容詞serēnus,-a,-um(平静な、穏やかな)の中性・単数・奪格。temporeにかかる。
vītae: vīta,-ae f.(人生)の単数・属格。temporeにかかる。
tempore: tempus,-poris n.(時、時期、季節)の単数・奪格。
praestō: 手近に、そばに(副詞)
sunt: 不規則動詞sum,esse(いる、ある)の直説法・現在、3人称複数。
simul: 「いっしょに、同時に」。simul atqueは熟語で、「~するや否や、~したとたんに」。
atque: そして
hiemem: hiems,hiemis f.(冬)の単数・対格。
fortūnae: fortūna,-ae f.(運命)の単数・属格。hiememにかかる。
vīdērunt: videō,-ēre(見る)の直説法・能動態・現在、3人称複数。
dēvolant: dēvolō,-āre(飛び去る、急いで去る)の直説法・能動態・現在、3人称複数。
omnēs: 第3変化形容詞omnis,-e(すべての)の男性・複数・主格。amīcīと「性・数・格が一致」。
逐語訳
ツバメが(hirundinēs)夏の(aestīvō)季節に(tempore)そばに(praestō)いる(sunt)が、寒さに(frīgōre)駆り立てられて(pulsae)消え去る(recēdunt)ように(ut)、それと同様に(item)偽りの(falsī)友は(amīcī)人生の(vītae)穏やかな(serēnō)時期においては(tempore)そばに(praestō)いる(sunt)が、運命の(fortūnae)冬を(hiemem)見てしまった(vīdērunt)とたんに(simul atque)、みな(omnēs)急いで去る(dēvolant)。
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