西洋古典– category –
-
西洋古典
人の世に注ぐ涙:ウェルギリウス『アエネーイス』
Sunt lacrimae rerum et mentem mortalia tangunt. ウェルギリウス『アエネイス』1.462 「ここにも人の世に注ぐ涙があり、人間の苦しみは人の心を打つ」(岡道男、高橋宏幸訳) このラテン語のうち res については「人の世」と解釈され、また、mortalia を... -
西洋古典
穏やかな言葉は怒りを打ち砕く(柔よく剛を制する)
Sermo mollis frangit iram. 穏やかな言葉は怒りを打ち砕く。 sermo は「言葉、発話」を意味する名詞で、英語の sermon の語源です。英語では「教会の説教」という意味で使われます。sermo を使った格言に、Sermo imago animis est. (言葉は心の似姿)が... -
西洋古典
夏草や兵どもが夢の跡: Et Thebae steterant altaque Troja fuit.
表題のラテン語は簡単に見えて奥が深いです。 Et Thebae steterant altaque Troja fuit. かつてテーバエが聳えていた。高いトロイアがあった。 このラテン語は時制の解釈が鍵を握ります。steterant はいわゆる過去完了で fuit は完了時制です。ラテン語の... -
西洋古典
多くを求めること:ホラーティウス
Non qui parum habet, sed qui plus cupit pauper est. 僅かしか持たぬ者でなく、多くを望む者が貧しい。 これはセネカの言葉です(ep.2,6)。 ラテン語には、金銭の執着を戒める警句がじつに多いです。短いところでは、ホラーティウスの「貪欲な者は常に... -
西洋古典
心のバランス:キケロー
タイトルは equal の語源、aequabilis の名詞形で平衡と訳されます。日常生活を送っていると、「バランス」という言葉の大事さを痛切に感じるときがあります。言い過ぎてもだめ、言わなくてもだめといった具合に。この言葉を使ったキケローの表現をご紹介... -
西洋古典
カルタゴ人の都づくり:ウェルギリウス『アエネーイス』
Aen.1.423-436 建設中のカルタゴを眺める主人公。その目に映った都の様子は以下のように描かれています。 Instant ardentes Tyrii pars ducere muros, molirique arcem et manibus subvolvere saxa, pars optare locum tecto et concludere sulco. 425 [Iu... -
西洋古典
火を剣で突く:ホラーティウス
日本語では「火に油を注ぐ」という言い方がありますが、このことをラテン語ではignem gladio scrutare (火を剣で突く)と言います。これはホラーティウスに見られる表現です。 火に関連した格言を紹介します。 Ignis nōn extinguitur igne. 火は火によっ... -
西洋古典
Ipse dixit. 子曰(しのたまわく):キケロー
Ipse dixit. を直訳すると「彼自身がそう言った」となります。キケローの『神々の本性について』に見られる言葉です。 この文の主語は、ピュータゴラース派の師、ピュータゴラ-スその人を指します。この学派の人間は議論の論拠を求められると、きまってこ... -
西洋古典
神々はわれを見守り給う:ホラーティウス
Di me tuentur. 神々はわれを見守り給う ホラーティウスの言葉です(carm. 1.17,13)。動詞の tuentur は「見る、保護する」という意味を持ちます。詩の文脈を抜きにすれば「神々はわたしを見つめている」と訳せます。主語が複数になっているのは、ローマ...