英語が苦手な君に

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英語がちょっと苦手な様子ですね.模擬試験の結果が悪くて落ち込んでいるとのこと.学校の勉強は試験範囲も決まっているから,試験前に集中的に勉強すればいいのですが,模擬試験となると話は別ですからね.大学入試のことを考えると,気も滅入る・・・その気持ち,わかります.

じゃあ,ちょっと息抜きに,「基礎力チェックテスト」でもやってみてください.1分で終わりますから.

「わかってそうで,答えが出なかった」という問題はありませんでしたか.つまり,それだけ体がなまっていた,ということです.すこし厳しい言い方かもしれませんが,内容はごく平凡な高校受験レベルの問題です.本来は90%以上できなければ困る内容ですね(アメリカ人の高校生の場合,平均50点ちょっとという話もあるが(^_^).じゃあ,何に困るかと言えば,普段の学校の授業を理解する上で困る,ということです.先生も困るし,あなたも授業がわからなくなって困るのです.

結論は簡単です.まあ騙されたと思って,中学校で習った勉強のおさらいをしてください.たとえば,大学入試用の単語集を覚えようとがんばっても,中学時代に習ったことがデタラメだと,3日もたたないうちに,勉強するのが嫌になってくるものです.勉強が続かないのは自分の根気がないためではありません.やり方に問題があるのです.

自分の実力に合った勉強を続ける限り,勉強は本来おもしろいはずです.だれにでもその人にとってふさわしいレベル,というものがあるのです.そのレベルの高い,低いはこの際問題ではないのです.自分のレベルをしっかりと見定めることがなにより肝心なのですから.

受験英語(それが役に立つかはとりあえず置いといて...^_^)において中学英語を理解しておく必要性は,数学でいえば,かけ算の九九がいえるのに等しい,と私は思います.九九が苦手な人は,どんなに難しいことを授業で習っても,決して正解は出せないように,中学英語の理解が不十分であるとすれば,いくら辞書を引いても,単語をたくさん覚えようとしても,すべての努力が空回りに終わるのです.

国語でいえば,さしあたり漢字の読み書きです.しかし,さすがに九九を知らない高校生はいないように,国語でも,ひらがなしか知らない生徒はいないでしょう.ところが,英語はどうか?といえば,肝心の中学英語を十分に理解できている生徒は,私の見た所,100人中1人いれば多いくらいです.

よく日本人は英語が苦手である,という話を聞かされます.今私がのべていることは,おそらく同じ事だと思うのですが,中学から6年間英語を学校で学んでも,なぜ多くの生徒は外国人に道案内すらできないのでしょうか.私のもっている中学2年生の教科書には,地図を見ながら道案内をする会話の文章が出てきます.

あなたはちゃんと学校で道案内の仕方を習っているのです.これは,生徒や先生の責任というよりも,学校教育のシステムそのものに問題があると思うのですが,結局は試験前の一夜漬け程度のつきあいしかしないまま,覚えては忘れの繰り返し,年齢だけ大人に近づいていく,というのが多くの生徒の現状ではないでしょうか.

一方,かけ算や漢字の読み書きの場合にはこういった問題は生じません.私たちは日常生活のあらゆる場面で,これらの知識を活用しながら生活を送っているからです.英語の場合は,今挙げた英会話の例を出すまでもなく,よほど意識して勉強を続けておかないと,すぐに習ったことを忘れてしまう,といった性格をもっています.たしかに試験ではその気で勉強すれば,悪い点は取らずにすむのです.先生は出題範囲を前もって生徒に告げておくからです.訳なり,答えなりを一夜漬けで暗記すれば,何とか赤点は取らずにすむのです.でも,本当に力が付いてるって感じはしませんよね^_^).

具体的には,本屋に行って,中学1年生用の問題集を買って解くことです.大学受験生だから,大学受験用の問題を買う,というのは駄目です.それは誰だってやっています.(大人用の英会話の本も,基礎を重視した実用的でわかりやすいものです)

恐らく初めのうちは,今回の「基礎学力診断テスト」と同じような点数を取るでしょう.私のデータでは,「英語が苦手!」という高校生の場合,たいてい2問に1問は間違う勘定です.しかし,普段解いている大学受験の問題と違って,間違ったときの気分が全然違うことに気づいてください.

つまり,「あっしまった!」とか「そういえば,そうだったなあ!」という感じですね.大学入試用の問題だと,到底こういう気持ちにはなれないでしょう.たいていが4つから1つを選ぶ形式ですから,できてもマグレということもあるし,できなくても「どうでもいいや!」という投げ遣りな気持ちになるものです.こうして,自分の勉強の中身にだんだん責任が持てなくなっていくわけです.

また,大学受験の勉強では,覚えることがあまりにも多すぎて,なんだかコップで海の水をすくうような空しい気分になってきます.それに対し,中学英語の問題は,なんといっても,単語のレベルが限定されています.覚えるべき事柄は,単語ではなく,むしろ英語の基本的なルールです.例えば,「受動態=be動詞プラス過去分詞」とか,です.

このルールはどう数えてみても200もありません.(→久保清子著『中学3年間の基本構文175で英会話ペラペラ,中学英語でこんなに話せる』(明日香出版社,1993年,1200円)は大変よくできた本だと思います).代表的な例文は,丸ごと暗記すればいいのです.1日20も覚えていけば,10日で終わる計算です.大学受験で問われる内容のすべてを網羅的に覚えようとすることは,たしかにコップで海の水をすくうようなものですが,中学英語の復習は,せいぜい風呂の水をコップでくみ出すようなものです.簡単なことでも,まじめにやっていますと,「これが本当の勉強だったのだな!」という気持ちがわいてきます.

英語を好きになるには,発音も馬鹿にしてはいけません.簡単な英語でも聞き取ることは難しいものです.できればテープを何度も聴いて耳を鍛えて下さい.発音に自信がもてないことは,日本語で言えば,漢字が音読できない気持ち悪さを味わいようなものです.英語の歌が好きなら,歌詞カードをヒントに勉強すると一石二鳥ですね.映画も最高の先生です.2~3回以上見ていると,話の流れは頭に入っているので,いちいち字幕は見なくなるものです.このとき初めて俳優のせりふに耳を傾けるようになります.聞き取れなかったところがわかったときは本当に嬉しいものです.

英語は苦手,英語の勉強は嫌い...やり方に問題があるだけです.試験の点数にこだわることはいったん忘れて,面白いと思える勉強の仕方を自分で見つけてほしいと思います.英語で日記をつけるとか,興味のあるジャンルの英語雑誌を手に入れるとか,英語を使って,個人輸入に挑戦してみるとか,etc.

それでは,単語はどうすればいいのでしょう.単語を覚えることは,交差点の名前をひとつひとつ覚えるようなものだと思って下さい.しかし,車やバイクに乗る人は,毎日道路地図で交差点の名前を暗記しなければならないのでしょうか.必要なときに地図を広げればそれでいいのはないでしょうか.ふだんは普通に道路を走っていれば,やがて重要な名前は頭に入ってくるでしょう.要は,家の中に閉じこもっていないで,どんどん町に出ることです.普通に交通機関を利用し,普通に日常生活を送るなら,基本的な地名は自然と覚えられるはずだと思います.

あとはたくさん原文を読むことです.そうすれば,自然と必要な単語は頭に入ってくるものです.頭に入らないとすれば,難しすぎるテキストを読もうとするからです.英語の場合,標準的な入試レベルの英文の90パーセント以上は中学レベルの単語で構成されていますから,簡単に思えるテキストを利用しても,英文を読むこつは身に付くと思います.(この際,音読も有効).

とは言っても,受験英語の英文はそう簡単に読めるようにはなりません(ネイティブにも難解なはずです^_^).根気よく辞書を引いて予習をする必要も時には必要でしょう.まじめにとりくめば,うまく訳せずに1時間2時間があっと言う間に過ぎていくものです.しかし,時間がかかると言うことは,単語の知識が少ないためでもありますが,むしろ,文法の力,言い換えれば中学英語の理解が足りない結果である場合が多いものです.

受験生ならだれでも知っている単語の一つにstandという語があります.ふつう「立つ」という意味で使いますね.Stand up.と言えば,「立ちなさい」という意味になります.ところが,この単語には同時に「我慢する」という意味もあるのです.たとえばI can not stand it.といえば,「わたしはそれが我慢できない」と訳さなければなりません.もし「私はその中で立ち上がれない」とか訳したら,0点です.では私たちはやはり,このような細かな点まで含めて,しっかり単語や熟語を「暗記」していかないといけないのでしょうか.

私はそうは思いません.単語の知識に関しては,強制された勉強は効果が薄いと思います.また,中学英語の理解が単語の暗記の前に不可欠だと再三申してきたつもりです.これは具体的にどのようなことを意味するのでしょうか.例えば,中学1年の英語に戻りますと,前置詞のinの使い方を教えます.「学校で」といえば,in schoolとなるわけです.今の例文ではinがなかったことに注目ください.今の間違いの訳自体を素直に英語に直せば,どうみてもinが必要になるでしょう.つまり,元の文はI can’t stand (up) in it.となっていなければおかしいのです.

ということは,中学1年レベルの常識的な前置詞の使い方に慣れていれば,問題文のinの有無にもっと敏感になれる,と考えられるのです.あなたは単語の意味のひとつひとつを無理に覚えていかなくてもいいのです.ただ,いつもと様子が違うぞ,という感覚がピン!と鋭敏に働かないとだめなのです.何か変だぞ!という感覚が,すっと辞書に手を伸ばす原動力になるのです.

つまり,ありふれたstandという単語に「我慢する」という訳語を「自分の力で」見つけ出すためにも,中1で習う前置詞の復習は重要です.このような例はいくらでもあります.He runs a small restaurant.といえば,「彼は小さなレストランを経営する」と訳すのであって,けっして,「彼は小さなレストランの中で走っている」とはなりません.

あなたは,何も中学校の英語の教科書が読めないわけではないのです.むしろ読めるから,その大切なポイントを無視する傾向があるのです.

最後に私の取って置きの勉強法を申し上げましょう.私がお願いしたいことは,「簡単な日本語を英語に直す練習」です.はじめは騙されたと思って,中学一年用のレベルに限定して,その英作文がすらすらできるまで繰り返してください.大学生でもすらすらできる学生は希です.まして中3までの範囲で出題しますと,?が続出です.わたしが重視するのは英作文としてみた中学英語ということなのです.これが縦横無尽に日本語から英語に直せるレベルに到達できてこそ,真の意味で英文法をマスターした人と申し上げてよいでしょう.繰り返しますが,覚える例文は200以下です.

これは漢字の勉強と同じことです.漢字を「読む」練習も大切ですが,むしろ「書取り」の練習をした方が,短時間で効果があるということです.私も最近はワープロを使うので,実感することですが,読み方は知っていても,いざ書くとなると,正しく書けない漢字は案外多いものです.辞書を見ないで書ける漢字は,必ず読めるはずですね^_^)

焦る気持ちはわかりますが,そうせっかちにならないことです.大学に入っても,英語が嫌いで,年々忘れる一方の人が大勢います.大学に行かなくても社会に出て,英語を達者に使っている人が大勢おられます.これからは,大学卒の肩書きに頼らなくても生きていける人が輝く時代だと思っています.自分の道を自分で切り開ける人になるためにも,英語の実力を身につけることは重要です.徹底して基礎の総復習を繰り返し,せめて身の回りのことをすらすら英語で言えるようにしてください.

わからない表現があれば和英辞典などをみればちゃんと載っています. 自分で自分に問題を出す方が,他人の作った問題を解かされるよりも面白いじゃありませんか.それでも模範解答がないのが気になるって?気になったらその問題意識を大切にすることです.いつかどこかでその答えに気づく日が訪れます.もしかすると,映画のせりふの中で,好きな俳優(女優)が「これだ!!!」という表現をささやいてくれるかも...

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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