音読の重要性について

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音読の重要性について

趣旨:「速読力は絶対必要(辞書ばかり引いていられない).訓練として音読が有効.テープを聴きながら目を動かすと,後戻りしないで読む癖がつく.速読は音読以上の速度が出せる.」

インターネットで得た英文の情報を,いかにすばやく正確に読み解くか?英文読解の真の実力は,今後ますますシビアに問われることになるでしょう.

英文の速読力を身につけるためには,気に入ったテキストを何度も繰り返して読むことが大切です.高校や大学の授業では基本的に精読を行うわけですが,普通に予習した場合,1時間近くかける人が多いようです.

せっかく予習に時間をかけたなら,授業の直後に何度も読み返すとよいでしょう.例えば,300語の英文を音読してみると,遅い人でも3分あれば読めるはずです.これは実際に時計で計るとよいと思います.理由は,立ち止まったり,前に戻ったりしないからです.簡単なことのようですが,英文を立ち止まらずに読み下す経験をもつ人は少数派です.

何度も読み返したテキストなら(あるいは辞書等で不明な箇所をなくしたテキストなら)後戻りせずに音読なみに,あるいはそれ以上にすらすら読み通せるはずです.このスピードに慣れるために,日頃から徹底的に繰り返し読み,その際音読を併用することをお勧めするわけです.反復読みで理解が飛躍的に向上することはあっても,より難しくなることは決してありません.「読書百遍」の言葉は真実です.

高校や大学の授業では,1時間で300語程度の英文を読みますが,その英文が副読本の場合20~30ほどあって,授業では一年かけて勉強します.それに対し,もし音読以上の速さで英文を読む術を身につけたなら,一度で全体の意味がつかめなくても,数回読み返せば大体の英文の内容は見当がつくという揺るぎない自信が得られるでしょう.1つの英文を数回読み返し,数分で内容を把握できるようになれば,1冊の英文テキストは合計1時間ちょっとで読み通せる計算になります.

ちなみに,300語の読解に1時間かける場合は,1分あたり,5つの単語しか読めていないことになりますが,同じ英文を3分で読み通せば,100語読んだことになります.その差は歩く速度(時速5キロ)と高速道路を走る車の速度(時速100キロ)の差に匹敵します.

ついでに補足しますと,上記のテキストを音読してテープに吹き込んだとしましょう.何度も練習した上で,1課ずつ吹き込むことに成功したなら,60分(3分×20課)テープに全部の内容を収めることも可能です.とすれば,毎日教科書を開け,テープのスイッチを押すことにより,1時間で1冊の教科書を読み通すこともできるわけです.ネイティヴスピーカーの吹き込んだテープが別売してあれば,それを活用するのもよい方法です.

是非一度,教科書を広げ,声を出して1時間以内でその全体を読み通すことにチャレンジして下さい.音読ができるようになれば,黙読で読み通すことはいっそう簡単です.黙読とは,いわば心の声で読むことですが,口に出してなめらかに読めない箇所は,黙読でも読みにくい箇所のはずです.まずは,音読でスムーズに読む練習をして下さい.大学入試にせよ,各種検定試験にせよ,試験が近付き,「後1週間!」と青い顔をするか,「1日あれば教科書は数回読める!」と考えられるかの違いは,天と地ほどの開きがあります.

インターネットで海外の情報を積極的に取り入れるためにも,英文速読のテクニックは重要です.現代生活において車や電車の利用は不可欠であるように,この点はいくら強調してもし過ぎることはないでしょう.無論,道端に咲く花は歩いてこそ眺めることもできるように,辞書を引いて精読することが無価値であるはずはありません.私たちは時と場合に応じて,歩いたり車に乗ったりするように,英語の読解に際しても,様々な読み方を適切に使い分けられるように心掛けたいと思います.

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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