オウィディウスの『悲しみの歌』

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ヘクトルの誉れ

Hectora quis nosset, si felix Troja fuisset?
publica virtuti per mala facta via est.
誰がヘクトルのことを知っただろう?もしトロイアが幸福であったなら。
公の不幸を通して勇気に道が築かれた。

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「誰が(quis)ヘクトルのことを(Hectora)知っただろう(nosset)?」について。 nosset は「知る」を意味する第3変化動詞 nosco の接続法・過去完了。novisset の別形。 si 以下について。「もし(si)トロイアが(Troja)幸福で(felix)あったなら(fuisset)。」という条件文。fuisset も sum の接続法・過去完了。「si + 接続法・過去完了 / 接続法・過去完了」の構文で、過去に於ける事実に反する事柄を仮定する。実際には、トロイアはギリシアに滅ぼされ、悲劇的な運命を辿った。

2行目

「公の(publica)不幸を(mala)通して(per)勇気に(virtuti)道が(via)築かれた(facta…est)。」という構造。個人の不幸(privata mala)でなく公の不幸(publica mala)が個人の勇気を奮い立たせ、彼に真の誉れを与えたという解釈が示されている。

オウィディウス

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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