英語とラテン語

民主主義

民主主義

民主主義とは何かということに関しては、夥(おびただ)しい数の図書があるが、リンカーン大統領の残した「人民の人民による人民のための政治」という定義 は今も新鮮さを失わない。デモクラシー(democracy)は、「デーモクラティア」(demokratia)というギリシア語に遡る言葉であるが、ギリシア語本来の意味に注意すれば、「民衆による(デーモス)支配(クラトス)」という意味になる。

これに対して「貴族」は「最善の者」、すなわち「アリストス(aristos)」と呼ばれたため、「民主政治(democracy)」に対する「貴族政治」は「アリストクラシー(aristocracy )」といわれる。同様に、「専制政治」は autocracy 、「衆愚政治」は mobocracy 、「独裁政治」は monocracy 、「金権政治」は plutocracy と呼ばれる。これらの単語を識別するポイントは、言うまでもなく -cracy の前につく言葉に着目することである。

ところで、「官僚政治」を意味する英語はビューロクラシー(bureaucracy)であるが、bureau(ビューロウ)は「官僚」でなく 「事務机」を意味している。つまり、何でも机上で処理するお役所的体質を揶揄した言葉がビューロクラシーというわけである。

ちなみに官僚の「天下り」は英語で golden parachute (ゴールデン・パラシュート)と表現される。この英語表現に gold(金)が含まれている点も見逃せないが、対する日本語表現(天から下る?)をよく吟味すると、官と民の対比を「天」と「地」になぞらえているようで、冷静に考えればおかしな表現である。

というのも、「官僚」や「役人」は英語で (government) official と呼ばれるが、役所で働く者は皆、総理大臣(prime minister)も含め、civil servant (公務員)に相違ないからである。civil(市民の)はラテン語で「市民」を意味する civis (キーウィス)に由来するが 、一方の servant は serve (サービスする)者、すなわち「奉仕者」を意味することは自明である。(さらに言えば「奴隷」を意味するラテン語 servus に由来する。)

なお、「総理大臣」ないしは「首相」を意味する prime minister は、ラテン語起源の言葉である。prime は「第一の」という意味の primus (プリームス)に由来し、minister は「従者」を意味するラテン語 minister(ミニステル)がそのまま英語に取り入れられたものである。従って、prime minister を語源に留意して直訳すれば、「第一の僕(しもべ)」という意味になる。

かりに国の政治に問題があるとすれば、その責任は監督者たる「国民」の側にある。教育は「国民」が賢明になるために用意されるべきものであり、きわめて社会的な意味をもつ。現状は利己的な学びが奨励されることにより、政治に対する無関心が助長されているのではないだろうか。

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