※以下、メモ書きです。
時代背景
- 前70(10月15日)-前19(9月21日)。プーブリウス・ウェルギリウス・マローは、マントウァ(現マントヴァ)近くの村にて生を受ける。(ドナートゥス『伝記』二節、他)
- 内乱と政争に明け暮れる祖国。
- カティリーナの反乱。
- ユーリウス・カエサルとポンペーイウスの争い。
- 前43年3月、ユーリウス・カエサルの暗殺。25歳の時のこと。『農耕詩』(1.466以下)に当時の胸中を吐露。
- マールクス・アントーニウスとオクターウィアーヌスによる覇権争い。第1巻エピローグにて、内乱を描く。
- 救世主としてのオクターウィアーヌス。cf. 1.500-501 hunc saltem everso iuvenem succurrere saeclo/ne prohibete.
- 平和の象徴としての農夫の労働。cf. 1.494 agricola incurvo terram molitus aratro
- 内乱の終結。
- 前31年、オクターウィアーヌスの勝利(アクティウムに於ける)。ウェルギリウス、39歳。
- オクターウィアーヌスへのオマージュ。作品内で、繰り返し「呼びかけ」る。第3巻序歌、第4巻の締めくくりの部分など。
- 第4巻後半の「アリスタエウス・オルペウス」エピソードとの関連もあるか。→「オルペウス・エピソード」参照。
- 失われた蜜蜂の群れを再生したアリスタエウスは、内乱を終結させ平和をよみがえらせるオクターウィアーヌスと重なるとの解釈もある。
- 作品発表。
- 前29年の夏。40歳。約7年ごしの完成。前作『牧歌』は前39-38頃公刊。
- 作品着手は、パトロンであったマエケーナスの意向をくんだもの。『農耕詩』の中で、繰り返しマエケーナスの名をあげて感謝を表明。(例として、第3巻序歌、40-41参照)
先行する教訓叙事詩
- ギリシアの詩人ヘーシオドスの『仕事と日』を直接のモデルとする。
- 労働と正義を重んじる態度。
- 作品の随所でヘーシオドスに言及。cf. 2.176
- ローマの詩人ルクレーティウスの自然哲学詩、『事物の本性について』の影響は大きい。第2巻エピローグの「農耕賛歌」における言及など。
- felix qui potuit rerum cognoscere causas…(2.490)
- アラートスの影響。1.351-468 において。テオプラストスの影響。2巻にて。アリストテレスの影響。3巻、4巻。
- 大カトー、『農業論』(De agri cultura)の影響。
- ウァッロー、『農事考』(Res rustica)の影響。
作品の構成と主題
- 第1巻序歌にて、詩人自ら作品全体の構成を明示。
- 第一巻:畑の耕作。
- 第二巻:果樹栽培。
- 第三巻:家畜の世話。
- 第四巻:養蜂。後半の「アリスタエウス・オルペウス」エピソードの意味は?
- 主題
- 農業に関する知識の開陳は主たる目的ではない。大カトー、ウァッローの先駆的作品とは立場が異なる。
- 農業に関する知識の開陳は主たる目的ではない。大カトー、ウァッローの先駆的作品とは立場が異なる。
農業について語ることによって、労働や技術の意味を問うている。ここにヘーシオドスの作品の継承と発展の跡が認められる。
己について語ること
- カエサル(アウグストゥス)とマエケーナスとの関係
- ヘーシオドスとルクレーティウスへのオマージュ
- スプラギス――『牧歌』から『農耕詩』、そして未来の叙事詩へ
- 第2巻エピローグ――『牧歌』から『農耕詩』
- 第3巻序歌――未来の叙事詩の約束
- 第4巻エピローグ――スプラギスとしての「アリスタエウス物語」
牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 小川 正広