ウェルギリウスの『農耕詩』は次の8行で締めくくられています。一般にスプラギス(印章、自分が作者だと知らせるサインのようなもの)と呼ばれる箇所です。
Haec super arvorum cultu pecorumque canebam
et super arboribus, Caesar dum magnus ad altum 560
fulminat Euphraten bello victorque volentes
per populos dat iura viamque adfectat Olympo.
Illo Vergilium me tempore dulcis alebat
Parthenope studiis florentem ignobilis oti,
carmina qui lusi pastorum audaxque iuventa, 565
Tityre, te patulae cecini sub tegmine fagi.
私は畑の耕作、家畜の飼育、
また樹木について歌った。一方偉大なるカエサル(アウグストゥス)は、底深き
エウフラテース川の傍らで、戦の雷を放ち、
勝利者として服従する人民に法を与え、天への道を目指して進んだ.
その間、うるわしきパルテノペーは誉れなき閑暇の仕事において活躍した私ウェルギリウスを養ってくれた.
その私とは、かつては牧人の歌を戯れに歌った者である.若き日に大胆にも
ティーテュルスよ、枝を広げたぶなの木の下でおまえを歌った者である。(4.559-566).
詩人の過去と現在が、アウグストゥスの過去、現在、未来と対置されています。
詩人の未来は空白となっています。次に完成させる叙事詩がこれに当たります。
また、その完成によってアウグストゥスの神格化も完成することが示唆されています。