2015-12-07 授業メモ

ウェルギリウスの『農耕詩』
>>『農耕詩』における独創性の問題
序章
第一章 農耕詩における多様性のテーマ
一 ヘシオドスの語る五時代説話とルクレティウスによる改変
二 ウェルギリウスによる黄金時代のテーマの受容
三 『農耕詩』における多様性のテーマ
四 ルクレティウスとウェルギリウスによる固有性のモチーフの扱い
五 補論
第二章 「アリスタエウス物語」の解釈
一 問題提起
二 文明観、愛と死のテーマに見られるルクレティウスの影響
三 「アリスタエウス物語」に見られるルクレティウスの影響
四 「アリスタエウス物語」の解釈
五 「アリスタエウス物語」に見られる構成上の問題
終章 『農耕詩』における独創性の問題
むすび

参考
「オルペウスとエウリュディケ」(ウェルギリウス、『農耕詩』4.453-527)(訳)

黄金時代か鉄の時代か
『牧歌』(Eclogae)における黄金時代再来のモチーフ。

商人は自分で海から退き、松材の船も商品を運ぶことはなくなるだろう。すべての土地がすべてのものを生み出すであろう(omnis feret omnia tellus Ecl.4.39) 。大地が犂に、葡萄の木が大鎌に苦しむこともなくなろう。(Ecl.4.38-40)

『農耕詩』の表現に見られる否定辞Necに注目。

Nec uero terrae ferre omnes omnia possunt. (Geo.2.109)
ところで、すべての土地がすべてのものを生むことはできない。

ルクレーティウスの表現は事実に反する過程の表現。

ferre omnes omnia possent.(D.R.N.1.166)
すべて(の樹木)がすべて(の実)を生むことができるだろう。

発展問題)「農耕讃歌」における2つの「知」の対比をめぐって。
>>ウェルギリウス『農耕詩』第2巻エピローグの「農耕賛歌」の訳
参考資料1)>>「知識と科学」
参考資料2)>>「聖なる好奇心」

ウェルギリウスは「働くこと」を「神の与えた罰」という見方でなく「試練」とみなす。才能を磨き社会に生かすべきこと。それには多様な道があること。「すべてがすべてを生まない」時代において、すなわち多様性が保障される時代において、個性を磨く意義がある。黄金時代は画一的でその意義は認められない。Varietas delectat.(多様性は喜ばせる)はキケローの言葉。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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