2015-11-02 授業メモ

  • URLをコピーしました!

前回受けた質問より。キケローのipse dixit. について。自分の意見を変えることは不定見でないだろうか。
>>Ipse dixit.子曰わく
議論を通じて変わり得ることに意味がある(キケロー)。(以下私の感想ですが)それは人として「善く生きる」道を変えることではない。「善く生きる」道を真摯に歩こうとすれば自身の考えが変わることこそ自然である。我々の歩行も、決められた直線をまっすぐ歩くことは自然に反する。

自分について
Cognosce te ipsum.(汝自らを知れ)。自分とは何か。学派に属して意見を同じにすることについて。セネカの批判。Non vitae sed scholae discimus.(我々は人生でなく学派のために学んでいる)。「マス」と「個」。in-dividual.(これ以上分割できない)。
>>「コミュニケーション

自分で考えるということ
「自立」in-de-pendentの意味するもの。自分で考えないと権威にぶら下がる。自分は自分。「和して同ぜず」ということ。権威にもたれる者はIpse dixitを繰り返す。不完全な自分ゆえ学ぶことへの欲求が高まる。
>>「個の自立」

言葉による表現の自由
ギリシャ神話より。妖精エコー(Echo)の悲劇。ローマの詩人オウィディウスによると・・・。エコーの悲劇とヘレン・ケラーの三重苦と比較。表現の自由。思考の自由を奪われる苦しみ。キケロー、Vivere est cogitare. (生きるとは考えること / 考えることは生きること)。
>>言葉

模倣と創造
規範に即して学ぶ。自分流に考える。『論語』の言葉。「学びて思わざれば即ちくらし、思いて学ばざれば即ちあやうし」。学びについて二つのアプローチ。ipse dixit.(キケロー)とcogito ergo sum.と述べたデカルトの「方法的懐疑」(De omnibus dubitandum.)。前者、自分で考えよ。後者、何事も疑え。「模倣も創造もどちらも大切」と孔子は言う。言われた通りにやる。自分で判断してやる。

才能とは?
「才能のある人、ない人」という言い方について。英語のジーニアスはラテン語のgenius(ゲニウス)。the superior or divine nature which is innate in everything, the spiritual part, spirit; hence], the tutelar deity or genius of a person, place, etc. (cf.: lares, penates).

守護神。自分を見守る者。(これは私の解釈ですが)ゲニウスとの対話を大切に。心の声を言葉に表し、自分でそれを読む(日記の勧め)。誰にも見せないことを条件として。自らなすべきこと、目指すべき道が見えてくる。
>>「才能と好奇心

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

目次