エッセイ

Ignis aurum probat. 火は黄金を試す

セネカの言葉です。これには後半があり、「苦難は勇者を試す」と続きます。本物の黄金は炎をものともしないように、勇気ある人間はどんな苦難も雄々しく耐えることができる。困難や不幸は人間の勇気を試す試練であるという主張です。

「疾風に勁草(けいそう)を知る」という言葉と相通じるところがあります。

神の摂理が存在する中、災厄はなぜ善人にも訪れるのか。セネカはこの問いに対し、安穏とした日々は人間をダメにする、神は精神を鍛えるために試練を与えているのだ、と説きました。

それは家庭で父が果たす役目と同じであるとも。「父は子に早朝から勉学を命じ、休日にもダラダラさせない。汗を、時には涙を溢れ出させる。だが母は子を懐に抱き、日陰にとどめようとする。決して悲しまぬよう、決して泣かぬよう、決して苦労せぬように願う」。

父の愛は「可愛い子には旅をさせよ」、母の愛は「可愛い子ゆえ旅をさせたくない」という気持ちと同じです。現実の苦難を説明するさい、父母の愛を例に出すところが斬新です。母性愛に包まれた平和な日々は幸福に見えて脆弱です。セネカいわく、「損なわれたことのない幸福は、どんな打撃にも耐えられない」。国づくりの基礎は人づくり。過保護、過干渉は国をダメにする。セネカの言葉は日本の教育にも警鐘を鳴らすもののように思われます。

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