2018-11-05 授業メモ

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ふりかえり

1)人生に関するセネカの逆説。人生は短くない。浪費するから短くなる。正しい使い方をわきまえれば人生は十分長い。哲学の勧め。
問い:哲学を中心に据えた生き方を選ぶかどうかで、なぜ人生は長くなったり短くなったりするのか。
2)人間社会に対するユウェナーリスの風刺。
問い:Mens sana in corpore sano.について。「健全な精神は健全な肉体に宿る」と訳すとどのような弊害があるのか。
アシックスの社名の由来について
3)ipse dixit.(先生が言われたから)と言う言葉について、キケローは何を批判したのか。その批判精神が現代社会においてなぜ重要だと考えられるか。
<参考>
哲学(philosophy)とは何か。philosophiaとは「知を愛すること」。知の対象は森羅万象。人文系、理系の区別は便宜的。究極の知は神の知。Ph.D.はDoctor Philosophiae(哲学博士)の意味。このphilosophiaは人文学の一分野としての「哲学」ではない。philosophy本来の意味での使われ方の名残。例)「医学博士」(Ph.D in Medicine)。「工学博士」(Ph.D. in Engineering)。この考えに立つとき、大学で学び研究する者はみな、philosophus/philosophaだと言える。

今週のテーマ

人間とは何か。キーワード。humanism / humanitas.「人文学」。キーフレーズ。Homo sum.(私は人間である)。
人間の定義:Homo sapiens / Homo ludens / Homo deusなど。
ギリシア、ローマに於ける人間の定義。神と人間の対比。神はimmortalis、人間はmortalis。
人間は死すべき存在であり、運命に翻弄される(→ギリシア悲劇)。なおmors(モルス)はラテン語で「死」。
ヘロドトスの幸福に関する言葉。「誰も死ぬまでは幸福ではない」。Nemo ante mortem beatus.
英語のfateとfortune。ラテン語のfatumとfortunaについて。孔子の「五十にして天命を知る」について。
運命に翻弄されるはかなき存在から運命(fatum)に従う敬虔な英雄へ。『アエネーイス』(ウェルギリウス)の主題。
オウィディウスの国外追放。『悲しみの歌』(参考:「妻との別れ」)※上の写真の絵のもとになった詩の一節。
不運、不幸をバネにして生きる道。「人間万事塞翁が馬」。
成功といえども幸運のなせるわざかもしれない。

再来週(11/19)のテーマ(11/12は休講)

「知ること」(scire)について。
何を知るか。知ってどうするか。知ってどうなるか。
De Natura Deorum.(キケロー)における三つの学派。エピクロス派、ストア派、アカデメイア派。
De Rerum Natura.(ルクレーティウス)における「知」。原子論と「心の平静」(アタラクシア)。Felix qui potuit rerum cognoscere causas.
Cognosce te ipsum.自知。「汝自らを知れ」。
フランシス・ベーコンの”Scientia est potentia”(知は力なり)について。
「知るとは何か」。孔子の答え。「子曰、由、誨 女知之乎。知之為知之、不知為不知。是知也。」(子曰く、由よ、汝に之を知ることを誨えんか(おしえんか)。これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり)
ソークラテースの「無知の知」。
大学で学ぶ「知」の行方。
役に立つか立たないかだけで学びの価値が決まるのではない。
ノーベル賞のメダルのラテン語」の示唆するもの。

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この記事を書いた人

ラテン語愛好家。京都大学助手、京都工芸繊維大学助教授を経て、現在学校法人北白川学園理事長。北白川幼稚園園長。私塾「山の学校」代表。FF8その他ラテン語の訳詩、西洋古典文学の翻訳。キケロー「神々の本性について」、プラウトゥス「カシナ」、テレンティウス「兄弟」、ネポス「英雄伝」等。単著に「ローマ人の名言88」(牧野出版)、「しっかり学ぶ初級ラテン語」、「ラテン語を読む─キケロー「スキーピオーの夢」」(ベレ出版)、「お山の幼稚園で育つ」(世界思想社)。

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